Leaders’ View
サイエンスとマネジメント
事業の成功に必要なのは
その両方がわかる人材
水野 篤志 取締役COO
創業のきっかけは?
古川:2001年に慶應義塾大学医学部初のスタートアップを戸田先生、岡野先生と共に設立しましたが、リーマンショックの影響で一旦は頓挫しました。
その後、再生医療と遺伝子編集技術の進歩を、研究指導を行う外科医として、また再生医療の法律に関わる弁護士として見てきましたが、戸田先生から「改めてその技術を使って事業化できないか」と相談を持ちかけられました。2019年のことです。新しい再生医療技術への興味と、タイミング的にもこれが最後のチャンスと思い創業に至りました。
創業メンバーは、水野さん以外の3人は当時と一緒です。
水野:大学院でドクターを取得した後、VC、バイオ関連のベンチャー・スタートアップ、大企業等で投資側、事業者側の双方の経験を積んできました。前職はAI×バイオのスタートアップでしたが、知人の紹介で古川先生にお会いし、その考えに強く惹かれました。その後すぐにオファーをいただき、参画を決めた次第です。
事業を通して実現したい社会・未来とは?
古川:新しいプラットフォーム技術である再生医療と遺伝子編集を組み合わせたところに、新しいイノベーションがあると考えています。
再生とは、機能を失った部分を補っていくことですが、従来のように同じ細胞ではなく、より機能的に強化された細胞で人の機能を再建していくことに我々は取り組んでいきたい。
「Above Healthy -より強く、よりパワフルに」そんな社会や未来の実現をイメージしています。
取り組みの現在は?
古川:動物実験では繰り返し効果をあげているので、それを人に打てるクオリティにしていくことに焦点を絞って、現在は取り組んでいます。
遺伝子編集は素晴らしい技術であり、CRISPR-Cas9という世界的な発明によって格段の進歩を遂げました。ただし、事業化においては米国で複雑に入り組んだ特許が障壁となっています。
それを迂回し、限られた費用で十分な効果を持つ細胞を十分な数確保する。なおかつ効率的に製造する。最適な方法を導き出すために皆で意見を出し合いながら、試行錯誤を繰り返しているところです。
目指す組織とは?
古川:サイエンスにおいて、意見を出し合うこと、話し合うことに立場の上下は関係ありません。この会社は皆がそういうバックグラウンドを持っており、若い人、入ったばかりの人もはっきりと意見を言ってくれますし、そこがよいところだと思っています。
我々には経験とそれゆえの発想がありますが、実際に試してくれるのは現場の研究員です。あがってきたデータへのフィードバックは行いますが、我々では気づかないところに気づいてくれたり、現場でやりながら考えてくれます。
彼らの成長の早さには、本当に驚かされます。
水野:研究開発に携わるメンバーの出身は、企業研究者もいれば大学で研究していた人もいます。同じ目的に向かって、時には補い合いながら切磋琢磨しています。皆、臆さず意見は言ってくれますので、マネジメントとしてはそれぞれの良さを活かしながらチームビルディングしていきたいですね。
古川:シリコンリバレーなどを見ていても「科学がわかって、事業もわかる」という人材が大勢いる。バイオベンチャーにはその両方ができる人材が、絶対に必要です。
今、研究開発に関わっているメンバーも少しずつマネジメントを覚えて、そんな人材に育ってほしい。将来は自分でベンチャーを立ち上げられるくらいになってほしい。そう願っています。